
体の昼と夜の交代リズム
睡眠は疲労回復の基本です。疲れたからといって栄養価の高い食事や、栄養剤などで「疲労回復ができる」と考えている方がよくいますが、栄養摂取による「活性化」と「疲労回復」は違うのです。そうした栄養も、十分な睡眠によって全身隅々に行き渡るものです。体の疲れは基本的に、睡眠以外で回復するものではないのです。体は不調になっても、神経を興奮させれば元気になってしまうものです(カフェインなどが良い例)。こうした神経の過剰な興奮状態を「元気」と勘違いしている人は少なくありません。体がこのリズムになると、体の疲労に応じて神経も高ぶっていくので、日常の中であまり疲れを感じることがありません。こういう人に限って休みの日に「長く寝たら調子が悪くなった」といいます。神経の興奮が緩むと、自分の体に蓄積した疲れを自覚してしまうのです。 体は自然なままであれば、朝日が昇れば神経が活性化しだして体を活性化させる「交感神経」で働き、夕方に日が落ちて暗くなれば休息・回復を優先させる「副交感神経」で働きます(この2つ神経のバランスを自律神経といいます)。夜更かしなど、このリズムに沿わない現代人の生活では、昼と夜の「交感神経・副交感神経」の交代リズムが崩れ、自律神経に狂いが生じるのです。睡眠の質には個人差がありますが、質の悪い睡眠の根本的な原因はこのリズムの崩れです。体に不調を感じたら、一定の期間だけでも早寝を心がけると、このリズムの狂いを修正しやすくなります。この時に「早起き」は必要ありません。疲労した体を回復させるには充分な睡眠が必要です。日頃「目覚まし」に頼り、体が回復を終える前に無理やり起きている人にとって、目覚ましを使わない自然な目覚めが重要になるのです(そのために早く寝ることが大事なのです)。
睡眠の目的は頭を休めること
睡眠による疲労回復には、その「質」が重要になります。眠りが浅いというのは、日常的な心身ともに緊張状態(無意識です)にある人が、その状態を睡眠にまで持ち越しているという状態です。緊張を持続したまま睡眠に入ってしまうと、回復に適する「緩んだ状態」になるまで多くの時間を要します。つまり睡眠時間と回復の時間は同じではないのです。 この「緊張」とは、体よりは頭(脳)の側が大きな問題となります。よく「布団に入ってもあれこれ考えてしまう」など、「頭は休まらない状態」です。脳が活発だと、体もそれに反応して緊張してしまうのです。寝る前にリラックスして頭が「ボー」っとしていれば、脳が休むに従って体の力も抜けていきます。体の力が抜けても、頭は緊張したまま…というのはよくあることで、緊張のない状態で効率のよい睡眠に入るには、頭をリラックスさせることが重要です。 日頃なかなか寝付けないとか、眠りが浅いとかという人は、総じて脳が活発過ぎて神経も昂っているのです。それを効率のよい睡眠に変える一番簡単な方法は、とにかくたくさん寝ることです。体は睡眠に入ると、時間が経つにつれてリラックスの状態に入ります。これが長ければ長いほどいいわけです。時間のある時に昼夜を問わず、二度寝、三度寝をしてみて下さい。こうした睡眠を何度か続けると、ある日に寝起きに体がすっかり回復したように軽く感じる時がきます(最初は寝れば寝るほど疲れを感じるようになります)。これは、それまで体の深部に蓄積してきた疲労の回復が終わったということです。体がこの状態に入ると、以後の睡眠は自然と効率のよいものになります。そして日常生活の中でも心身が自然にリラックスできている状態となります。
安静の勘違い
風邪をひいた時は「安静に」となりますが、ただ横になっていることを安静と思っている人は多いと思います。安静とは心身を休めることで、とりわけ「脳」を休めることに大きな意味があります。体の不調の多くは交感神経の昂り⇒自律神経の崩れ、から起こりますが、この時は脳の活動も活発になりがちです。脳が休めば体も休まっていくのですが、活発になっている脳はなかなか休もうとしません。周囲に何か刺激になるようなものがあれば、すぐそれに反応してしまうからです。例えば風邪で寝ている時にテレビを観る、本を読む、などをしていると、脳はそれを刺激と感じるので、活発な状態が持続してしまいます。このように脳が休まない状態では、体もリラックスできず、充分な自然治癒力が発揮できません。本当の安静というのは、脳までが休まることで体全部がリラックスしている状態をいいます(これが本当に実践できると大抵の病気などは良くなります)。 睡眠にも同じことが言えます。睡眠とは脳が完全に休める唯一の時間で、この時に脳が充分に休めると、その間は体の自然治癒力は最大限に発揮されます(自然治癒力というと「特別な力」と思う方が多いのですが、実際は体が自然な状態にあれば、自然に発揮される力です)。ただ、現代人の生活は様々な刺激が多すぎて、それを処理する脳に負担がかかりすぎ、脳の活性化⇒交感神経の亢進という緊張による体の不調が生じやすくなっているのです。人間の体が昔の刺激の少なかった生活から、100年足らずの間に刺激だらけの環境に変化(特にパソコンなど)しすぎてしまったため、それに対応が出来ないのです。本来は刺激⇒疲労の量が増えれば、それに応じて「安静」の時間を多くとる必要があります。現代人の体の不調の多くは、このバランスがとれていないことから起こるものです。
寝不足の日本人
世界の国々で睡眠時間を比較すると、日本は睡眠不足のトップクラスです。これはテレビ・パソコンなどにより夜更かしの習慣が一般化したためです。これを先の話に繋げると、どの国の人達より脳に多くの刺激を受けているにも関わらず、安静にする時間は少ない、ということになります(睡眠時間の多い北欧などでは、老若問わず就寝時間は10時前後です)。最近は睡眠の研究も進み、睡眠には脳が休むノンレム睡眠と体が休むレム睡眠があるとか、これが1時間半単位で切り替わることから睡眠時間は4.5時間、6時間、7.5時間がいいとか、いろいろなことが言われています。しかし、こういうデータは大抵欧米を基準にしたもので、欧米人は総じて日本人より遥かにリラックスの上手な民族です。仮に日本人が欧米人と同じ睡眠をとっても、同じような回復は望めません。 日頃から寝不足を自覚している人は、連休などを利用して過剰なまでに寝てみて下さい。活性化の交感神経から、回復の副交感神経に体が完全に切り替わると、胃腸などの内臓が温かくなって元気に動く感覚を実感できます(内臓の活性化は副交感神経)。内臓の血液がよく循環すると、手足も冷えることはありません。結果として全身に血液がよく循環すると、脳の興奮状態も自然に治まります。これは自然治癒力が最大に活性化している状態です。この状態から更に眠ると、普段の睡眠では取れなかったような、体の深部に蓄積している疲れも回復していきます。ただ、体の深部の疲れは、皆さんが想像している以上に根深いものなので、これを短期で取りきることは出来ません。定期的に充分な睡眠をとって、一段一段、階段を上るように段階を踏んで回復させていくことをお勧めします。理想的な睡眠を得るまでは山あり谷ありですが、まずは試してみて下さい。
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