施術レポート


07/03/22


病気と施術

 

 


 今回は、慢性膵炎で腹痛と背部痛を常に抱えているSさんについて書こうと思います。
Sさんを初めて診させていただいた時の状態は、下肢の浮腫みと緊張、横隔膜を境に前傾姿勢が強く、上肢は長い間の血行不良から細くなり捻れていました。臓器は腹腔が長い期間押し潰されていたために、一つの塊の様になってしまっていました。実際、病院で診断を受けて、『臓器の間に本来あるべきはずの隙間が一切ありませんね。』と言われたそうです。
 車に乗って、段差で振動が身体に伝わるだけでも腹部や背部に放散痛が走り、それは普段の生活の中で『寝返りをうつ』という動作によっても付いて回るものだったそうです。痛みによって眠りを妨げられ、ほんの数十メートル歩くだけでも呼吸は荒くなり、毎日生活するだけでヘトヘトに疲れ果ててしまう状態でした。一時期は治療院まで通っていただくのもままならないこともあるほどでした。

膵臓は肝臓などの臓器と違い、一度壊れてしまった細胞の再生機能がほとんどありません。慢性膵炎は予後が長い病気だと言われている通り、無理をするとすぐに背部や腹部の痛みに苦しめられます。
 みぞおち辺りに触れるゴロっとした感触。まだ臓器の区別が触診ではっきりと判らなかった時には、胃と腸から作り出された緊張だと思っていました。
 半年以上経ち、臓器には『これは腸だな』『これは胃だな』と判別出来るほどの『隙間』ができてきました。下肢の浮腫みは今はありません。寝返りもゆっくりではありますがうてるようになりました。以前は少し腹部に触れただけで腹部全体に痛みが走っていましたが、それもだいぶ治まりました。膵炎から二次的に弱ってしまっていた腸も食生活の改善から安定してきました。内臓が安定してくるにつれ、体力も少しずつ回復してきました。
 身体が疲れやすくなってきたこと、体力が極端に落ちてきたことはもう20年以上も前から感じてはいたそうですが、気力が強い方で、いくら身体が疲れていても『歳かな?』と思ったくらいで動くことを止める(休養を取る)ということは全く頭に無かったそうです。アルコールの摂取も毎日で、その生活が何十年も続いたようです。倒れた時に初めて自分の身体の状態を知ったと言います。
 自分の身体の状態を把握するのは、感覚を鈍くせざるを得ない『頭中心の生活』を送っている現代の人には難しいことになってきたのかもしれません。しかし、壊れきる前に気付けていればここまで苦しまなくて済むのにと思います。
それは自分自身にも言えることです。もし大和で学んでいなければ、自分の身体を顧みることはあまりなかったかもしれません。様々な不調を感じてはいても、目先のやるべきことにしか目がいかず、自分の身体は後回しになっていました。

病気について学ぶようになってから、自分の現在の身体の状態がだんだん分かってきました。あまり健康とは言えませんが、無理や無茶を『知らずに』することはなくなってきました。
また、病気を知るにつれ、身体をそのままの状態で診ることが出来なくなってきたように思います。それは、症状に惑わされている部分もあると思うのですが、以前は知らないがための勢いみたいなものもあったのかもしれません。
しかし、『知らない』というのは同時に怖いことでもあります。その時々の状態を把握するものは触診や視診だけでなく、問診も見逃してしまいがちな病状を捉える上では大切なものです。
今はまだ、病気というものと大和で学んできた手技を結びつけて考えることが難しいです。組み立てが上手く出来ません。それは、これまでの考え方にはなかったものだったからです。『病気がどのようにして起こったか?』結果ではなく原因を改善していくという意味では、これまでやってきたことと変わりはないので、手探りな状態ではありますが、徐々に結び付けて施術の組み立てを出来るようになりたいと思っています。