4.ストレッチの注意

 

 自宅で行う運動としてストレッチを行う人は多いですが、ストレッチほど注意が必要な運動はありません。これまで説明したように運動は全身を動かすことが重要なのですが、ストレッチは関節を1つずつ動かしていくために、どうしても偏った動きになりやすいのです。体はどこか一部分だけ柔らかくすると、他を硬くすることでバランスをとってしまいます。

 

 例えば股関節のストレッチでは、股関節ばかりを柔らかくしようとすると、股関節が柔らかくなる代わりにすぐ側にある骨盤の関節(仙腸関節)が動きにくくなってしまいます。股関節ばかりが柔らかくなると、仙腸関節が動く必要がなくなってしまうのです。本来の股関節の動きは仙腸関節との協力で行われるものなので、股関節ばかりの訓練はこの協力関係を崩してしまいます。

 

 ストレッチとはこのように一部分にこだわって行うと、全身の動きのバランスを崩すものになってしまい、やればやるほど体のバランスが崩れてしまいます。ストレッチとは関節を1つずつ区切って柔らかくする運動ではなく、体そのものを柔らかくするための運動です。1つの関節が「どこまで曲がるか」を意識するのではなく、体が全体的に気持ちよく伸ばすことを重視して行って下さい。

 

 こうした運動は「気持ちいい」という感覚で行う限りは全身が緩みやすくなるので行えば行うほど全身が「伸びる」ようになりますが、無理をして痛みに耐えながら行うと全身が緊張してしまうので、逆に全身が「縮む」ことになってしまいます。「気持ちよく」を大事に、これも目を閉じて丁寧に行うことでよい効果に繋がっていきます。