4.ぬるめの入浴

 

 入浴の目的は「温める」こと、と思われがちですが、「水浴療法」という健康法もあります。人間の体は水に浸かっているだけで自然にリラックスします。リラックスすると、神経の高ぶりによって緊張していた全身の筋肉が緩みます。全身の筋肉が緊張している時は、血管の筋肉も一緒に緊張しているので、血液の流れも悪いのですが、これが緩むと血液がよく循環できる状態になります。

 

 「体が冷えている」ということは、緊張によって血液が流れにくい状態にあるということです。血液の流れがよくなれば、体は自然と温まります。本来、「入浴で体を温める」というのは、この神経的な緩みによって、体を自然な循環の状態に戻すことを目的とするので、温度による体温上昇は二次的な効果なのです。

 

 温泉の中には、温水プール程度まで温度の低いものがあります。温度が低いので体が温まるまで時間がかかるのですが、この温まりこそ、体が緩んで自然に循環したことで起こる「体の自発的な温かさ」です(もちろん薬効成分なども関係しますが)。つまり温度が低ければ体が温まらない、ということではないのです。温度に関係なく、体が温まらないというのは、神経的な緊張が緩まないことによるものです。

 

 これは、日常の入浴にも応用できます。温水プールに入るつもりで、自分が「ずっと入っていられる」と思える温度で入浴します。この場合は、寒ければ首まで浸かって貰って構いません。体が緩むとぬるいお湯でも熱く感じてくるので、その場合は更に温度を下げます。これを続けると、相当にぬるい温度でも体が温まります。湯の熱さで体が温まると、どこまでが「体の自発的な温かさ」なのか分かりませんが、この方法では自分で確認ができるのです。