1.食事のきほん


 胃腸にとって大事なのは「適度な栄養」と「休息」です。栄養を摂ることばかりを考えて、いつも胃腸を働かせる。疲れても休まないで栄養剤などを使う。これでは内臓も疲れてしまいます。そもそも日本人の食生活は一日二食が普通でした。それが戦争の時、欧米人の大きな体に追いつくために「一日三食」が推奨されたのです。しかし日本人の胃腸は三食に適していないので、消化不良を起こしがちです。腸の長い日本人の体では、食べたものからじっくり時間をかけて栄養を吸収し、それから排出をします。そのため、一日三食では排泄がうまくいかなくなりやすいのです。

 

 食事一食の消化・吸収に必要な時間を仮に「六時間」とした場合、朝の六時に朝食をとったとして、昼十二時に昼食、夕方六時に夕食だとすれば、夕食の消化・吸収が終わる夜の十二時まで、朝から胃腸は働きっぱなしになってしまいます。これでは胃腸はやすむ間もありません。睡眠の僅か六時間をやすませるだけでは、十八時間も働き続けた胃腸の疲れはとてもとりきれるものではありません。この間に「間食/夜食」などが入ればなおさらです。そんな疲れた胃腸に次々食べ物を放り込んだところで、充分に栄養を吸収できるはずもないので、結局は食べたものの多くが「無駄」になってしまうのです。

 

 健康な食事に必要なのは「無駄に食べない」ことです。よく健康的な生活には「規則正しい食事」が重要だと言われますが、お腹が減りもしないのに食事をするのは人間だけです。お腹が減るということは、体の中で栄養が足りなくなり、かつ新しい栄養を受け入れるための準備ができた、というサインです。そこで食事をするから消化・吸収もうまくいくのです。これをお腹も減らないのに(消化・吸収の準備ができていないのに)、「食事の時間だから」と食べてしまえば、胃腸に無駄な負担をかけるだけでなく、消化不良を起こしやすくなります。食事は「お腹が減るまで待って」から食べるようにしてみて下さい。

 

 ただ、食べ過ぎに慣れている現代人の体では「時間になったらお腹が減る(減った気がする)」という思い込み(「偽腹(ぎふく)といいます」)が多いので、そういう時は水などを飲んでお腹に刺激を与えてみます。そうするとたいていは空腹感がなくなります。特に胃腸が弱いという人は、お腹がグーグー鳴るまで気長に待ってから食事をしてみて下さい。