3.からだの「外と内」

 

 私たちにとっての「世界」とは体の表面、つまり皮膚を境界として「体の外側の世界」と「体の内側の世界」に分けることができます。その双方を同じように大事にするのが理想なわけで、私たちの意識がどちらかに偏ってしまうと心身のバランスも崩れます。ここでは「外側の世界」は世の中のこと。「内側の世界」を自分の体のことと考えて下さい。現代のような周囲に刺激の多い生活では外側ばかりに意識が向きやすく、体の内側に意識を向ける時間がなかなか持てません。こうした状態が続くと、外側の生活をうまく行うことばかりに目が向いてしまい、自分の心身の状態が悪くなってもなかなかそれに気付くことができません(特に体の潜在的な不調)。

 

 外にばかり意識が向いてしまうことで、知らず知らずのうちに体が不調をきたしてしまうと、それが「体の不調」としては自覚されないまま、「意識の不調」として現れてきます。イライラするようになったり、精神的に不安定になるということです。そうなると「外側の世界」でもいろんなことがうまくいかなくなってしまいます。外側がうまくいかないことで不満が蓄積すれば、それによって内側はさらに壊れてしまうという「悪循環」に陥りやすくなります。こうした意味から、普段から自分の体の状態に目を向けることはすごく重要なのです。

 

 逆に繊細・敏感な人が「外側の世界」との関わりを嫌って自分の内にばかり籠もってしまうと、「内側の世界」ばかりに目が向くようになります。内側ばかり見ているということは、それが体の状態であれ、精神の状態であれ、「些細なことを気にする」ということに繋がるため、神経が過敏になりがちです。そうなるとやはり、体が壊れたり精神のバランスが崩れやすくなります。体の外側と内側、どちらが過剰になっても心身は不調に陥りやすくなるので、双方に同じように目を向けるような意識や生活習慣が大切になります(もちろん一時的にどちらかに片寄るのは問題なく、平均的に双方が均等であればいいのです)。いくら体にいい食事をしようと、たくさんの運動をしようと、こうした体の内外のバランスを保たない限りは、健康な体を作ることはできません。

 

 たいていの体の不調(精神の不調)というのは、この「外側と内側のバランスの崩れ」から起こることが多いものです。毎日忙しい人なら、のんびりやすめる時間とそれを楽しめる気持ちの余裕があれば、たいていのことは治るものです。また、いつも体の些細な不調が気になる人なら、体をよく動かしたり、趣味など「活発な活動」をしていれば、それだけで体もよくなるものです。どんな愁訴も、それが「治りにくい」場合には、必ず生活のどこかに原因があるものです。心身に不調を感じたら、まずは自分の生活が「外側と内側」でうまくバランスがとれているかを考えてみて下さい。